子供の矯正治療の流れ
子供の矯正治療は一期治療・二期治療の二段階に分けて行われます。
一期治療
一期治療は、比較的簡単な矯正装置を使って二期治療で行う本格的な矯正歯科治療に入る前の準備段階の治療となります。この治療は5、6歳〜10、11歳頃の混合歯列期(永久歯が生え始め、乳歯も残っている時期)に行います。
二期治療
二期治療はワイヤーを使ったマルチブラケット矯正装置を使って永久歯の歯並び、かみ合わせを作り上げていく本格的な矯正歯科治療の段階です。一期治療でしっかりと二期治療のための土台を作っておくことでスムーズに二期治療を行うことが出来ます。11、12歳前後になり永久歯が生え揃ってから行う治療となります。
矯正歯科治療というとずっと続けないといけないと思っていらっしゃる方もいるかもしれませんが、一期、二期治療に分かれ、効果的に行っていくためずっと治療を続けないといけないということはありません。
- 一期治療の治療期間は1〜2年前後、通院は1〜2ヶ月に1回ほど
- 二期治療の治療期間は2年前後、通院は1ヶ月に1回ほど
一期治療では、永久歯がきれいに生え揃うように歯列を広げ歯が並ぶためのスペースを作ったり、部分的にワイヤー矯正装置を使って前歯がきれいに並ぶようにしたり、上下の顎のバランスが良くなるよう整えたりということを行うのが目的です。ここでしっかりと二期治療で行う本格的な矯正歯科治療の土台を作ってあげることが大切です。
一期治療での治療段階がある程度出来てきたら、経過観察に切り替えるということもあります。この場合は3〜6ヶ月に1回の通院となりますが、気になる点などありましたらいつでもご相談ください。
一期治療を終え、二期治療に入るといよいよワイヤー矯正装置を使った本格的な矯正歯科治療の開始です。永久歯のかみ合わせ、歯並びをしっかりと整え、作り上げていきます。歯がきれいに並ぶスペースを確保するために歯を抜くという治療もこの時期に行います。
この、二期治療できれいに並んだ歯並び・かみ合わせを維持することを「保定」と言います。保定のため、取り外し可能な「リテーナー」と呼ばれる装置を終日かもしくは夜間に装着します。リテーナーは後戻り防止装置とも言われ、きれいに並んだ歯並び・かみ合わせが戻ってしまわないように使用するものです。
一期治療の目的・メリット
一期治療には沢山のメリットがあります。矯正歯科治療は成長し永久歯が生え揃ってからではないと始められないと思っていらっしゃる方もいるかもしれませんが、乳歯の残った子供の頃から一期治療を行うことは「成長を利用して歯をきれいに並べることが出来る」という大きなメリットがあるのです。ここでは代表的なメリットをご紹介していきたいと思います。
顔のバランスを整える(最大のメリット)
上下の顎を整えることで顔のバランスが良くなる
出っ歯(上顎前突)、受け口(下顎前突)や顎が曲がるような症状がある場合、歯の問題だけではなく骨格全体の問題が関係していることが多いのですが、この場合にはお顔のバランスに悪影響が出てきてしまいます。成長期に治療することの最大のメリットがこれで、一期治療を行うことで骨格的に上下の顎のバランスが良くない状態でも、成長を促しながらバランスを整えてあげることが出来るのです。
まだ成長しきっていないうちに一期治療を行い、上下の顎のバランスを整えておくことで二期治療で行う本格的な矯正歯科治療の際に永久歯を抜く必要がなくなったり、治療自体が簡単になったり、将来的なリスクを減らすことが出来るなど、沢山のメリットを得ることが出来ます。
歯並びについて
歯がキレイに生え揃うよう、歯列を広げてあげる
歯列を横に広げてあげると、デコボコがあってもある程度自然に改善します。
奥歯のかみ合わせを整える
上の奥歯が下の奥歯より外側にあるという状態が正しいかみ合わせです。しかし、片方かもしくは両方とも奥歯のかみ合わせが上下逆さまになってしまっている場合があります。片方のかみ合わせだけがおかしい場合、上下の中心までずれてしまい、更には顎の曲がりまで伴ってしまうことも多く、早め早めに治してあげることが必要となります。
キレイに永久歯が生えるようにする
乳歯から永久歯への生え変わりの際、よくあるのがまだ生えていない永久歯が変な位置に生えてきてしまうというケースです。まだ永久歯は埋まっている状態のため、レントゲンを撮ることで問題がわかります。もしもこのように変な位置に生えてきてしまいそうな永久歯があった場合、乳歯をタイミング良く抜いてあげることで、キレイな位置に生えるように促してあげることが出来ることもあります。
これを抜かずにいると、歯と歯がぶつかったり、八重歯になって生えてきてしまったりします。乳歯を早めに抜くことで、永久歯が正常な位置に並んで生えてくるように誘導してあげるのです。
機能について
呼吸状態がよくなることも
一期治療を行うことは呼吸にも良い影響を与えることがあります。下顎が小さい骨格を持つお子さんの場合、気道が狭くなっていることもあるのですが、下顎を前方に成長させてあげることで気道を広げることが出来るため、呼吸の状態がよくなるのです。
いずれも個人差はありますが、急速拡大装置も鼻腔の中を広げる効果があるとの報告もあり、鼻の通りが改善することも期待出来ます。
発音の改善も期待できる
歯を噛んだときに上下の前歯がかみ合わないような状態を「開咬」と言いますが、これは、指しゃぶり、舌癖などの悪習慣の他、顎の形や大きさに問題がある場合に起こります。
開咬のお子さんは前歯が開いてしまっていることでサ行が上手く発音出来ず、滑舌が良くない場合があります。歯並びを整えかみ合わせを治してあげると、滑舌が悪くなってしまっている原因が改善され、発音が良くなることもあるのです。
一期治療を始める時期
「矯正歯科はいつから始めたらいいんでしょうか?」
お子さんの矯正歯科治療を考えていらっしゃる親御さんの多くがこんな疑問を持っています。そんな疑問の解答として良く言われるのが「お子さんそれぞれの歯並びやかみ合わせによって時期は変わります」ということですが、これでは目安になりませんよね。
そこで、今までの子供の矯正歯科の経験から、
- 受け口は6~8歳前後など早めに
- 出っ歯、デコボコ歯などは8~10歳くらいからでも問題ない
と言えるかと思います。子供の歯並びでは、
- 永久歯がなかなか生えてこない
- 受け口
- 前歯がデコボコ
- 上の歯出てしまっている
などのご相談が多くみられます。これらは一見するとただ歯に問題があると思われるかもしれませんが、実は多くの場合、骨格的な問題も含んでいるのです。
親御さんには、このような骨格的な問題を考える前に「上顎の成長時期と下顎の成長時期は異なる」ということを知っておいて頂ければと思います。
比較的早い段階に成長する脳や神経系のように、上顎も近い成長パターンで成長します。上顎の成長は5~8歳くらいが最も成長の旺盛な時期で、10歳くらいまでには80%くらいまで成長しきってしまいます。対して下顎は身長と同じような成長パターンを持っており、女の子の場合は小学校高学年頃、男の子の場合は小学校高学年~中学生頃が最も旺盛に成長します。
つまり、上顎の成長を促してあげる必要のある「受け口」のお子さんは6~8歳くらいなど早めに矯正治療を始めるのが望ましく、下顎の成長を促してあげる必要のある「出っ歯」などのお子さんの場合は小学校中学年~高学年くらいから矯正治療を始めるのが望ましいのです。
とはいえ、お子さん一人一人成長のスピードや度合いは違います。お口や骨格などの状態によっては対応が異なりますので、まずは一度ご相談ください。
一期治療で使う装置
矯正治療で使われる矯正装置には沢山の種類があります。ここでは当院で矯正治療に使っている代表的な装置についてご紹介致します。
拡大装置(固定式)
- 取り外し出来ないタイプの拡大装置です。
- 歯の内側にワイヤーを付け、それを横に広げることで歯列が横に広がる力が加わります。
- 取り外し可能なタイプに比べ、歯に力を持続的にかけられるため、効率良く広がります。
- 前歯がデコボコでも、歯列を広げてあげることで自然と解消されていくことが期待できます。
急速拡大装置(固定式)
- 取り外し出来ないタイプの拡大装置です。
- 上顎の中央にある正中口蓋縫合という軟骨の合わせ目で広げる装置となっています。歯を動かすというよりは骨の土台から広げるという装置です。
- 上の拡大装置よりも大きく広げられ、広げた後も戻りにくいという特徴があります。
- 「急速」という名前の通り、2週間ほどと短期間で広げることが可能です。
- 鼻腔まで広がるという報告もあり、個人差はあるもののお子さんの鼻の通りが良くなったということも多いです。当院でも酷い鼻づまりがあるお子さんには積極的にこの装置を使っています。
拡大装置・拡大床(取り外し式)
- ご自分で取り外し出来るタイプの拡大装置です。
- ネジがついており、ネジを回す事で装置が横に広がる仕組みになっています。
- 食事や歯磨きの際に外すことも可能で、取り扱いが楽だという特徴を持っています。
- 装置を付けている時は広がる力が加わっていますが、外している時は力が加わらないため、装置時間が不足してしまうと効果が低くなります。
- 補助弾線というスプリングのような細い針金を加えて一部の歯を押すというようなことも行います。
リンガルアーチ(固定式)
- 取り外し出来ないタイプの装置です。
- 補助弾線をリンガルアーチに装着し歯を外側に動かします。
- 永久歯が生えてくる場所を維持したり、奥歯の固定源のために使ったり、歯列を広げたり、色々な用途に使用される汎用性の高いです。
上顎前方牽引装置(一部固定式)
- ご自宅にいる時や就寝時などに使用する、固定式の装置と、自分で取り外し可能なフェイシャルマスクからなっている装置です。口の中に装着したワイヤーに小さな輪ゴムを引っ掛け、マスクに繋ぎます。これによって前に引っ張る力が上顎や上の歯に加わります。
- 上顎の成長が不足している反対咬合のお子さんに装着し、上顎の成長を促してあげる装置です。
- 口の中に取り付けるのは急速拡大装置、マルチブラケット装置、リンガルアーチなどです。
バイオネーター(取り外し式)
- ご自分で取り外し出来るタイプのマウスピースのような装置です。
- 基本的には家にいる時や就寝時に使いますが、装着時間が長いほど効果は高くなります。
- 下顎が横にずれているお子さんや、下顎が小さい上顎前突症のお子さんなどによく使用します。
- 下顎を前に出した状態で作ることで下顎が前方に成長するよう誘導されるようになっています。
ヘッドギア(一部固定式)
- ご自宅にいる時や就寝時などに使用する、口の中に装着するフェイスボウと首に装着ネックストラップ、もしくは頭に装着するヘッドキャップからなっている装置です。
- 上顎の成長を抑制したり、上の奥歯の後ろに動かしたりします。
- 出っ歯(上顎前突)のお子さんに使う場合が多いです。
マルチブラケット装置(固定式)
- 取り外し出来ないタイプの装置で、これが一般的によく知られている矯正装置です。
- 歯が内側に入ってしまうのを改善したりします。
- 一期治療では全体にマルチブラケット装置を付けることはなく、歯を並べるために部分的に使います。全体にマルチブラケット装置を付ける矯正治療は二期治療で行います。
二期治療について
乳歯から永久歯に生え変わってから行う矯正治療が二期治療です。マルチブラケット装置という、ワイヤーの矯正治療を使うのが一般的な方法です。
一期治療を終えてからは経過観察を行い、そして中学年くらいになってから二期治療に移行となります。二期治療での目的はしっかりと永久歯の歯並びを作り上げていくことが目的です。全ての歯が永久歯に生え変わったこの段階では、歯を抜く必要があるか、抜かずにキレイな歯並びにすることが出来るかなど、二期治療の治療の流れを検討します。
二期治療をなるべく早く終えたり簡単にするためにも、一期治療をしっかり行い、問題点を改善しておくことが大切です。
一期治療を行わなかったお子さんは二期治療から開始することとなりますが、基本的には使用する装置は大人の矯正治療で使う装置とほぼ同じです。ですが、まだ顎の骨の成長が期待出来るという点は大きな違いでもあります。
よくある質問
- 痛みはあるの?
-
矯正治療のために矯正装置を付けると、歯を動かすための力(矯正力)が加わるため、歯が痛くなるということも多いです。しかしそれも2~3日ほどで、ずっと痛むということはありません。噛んだ時に痛いなど、一時的な痛みが多いです。
最初に装置を付けてからの数日中が痛いという人が一番多いです。その後、ワイヤーの調整をした後にも痛みが出ることもありますが、それも半日~1日ほどで、しかも最初ほどの痛みではないということがほとんどです。
装置が粘膜や舌に当たって痛いという方もいらっしゃいますが、装置が当たる部分をワックスで保護するなどして徐々に慣らしていくと、数日間でほとんどの方が慣れるようです。
どうしても痛いからと矯正治療を途中で断念することになったお子さんはほとんどいませんので、ご安心ください。
- 通院頻度はどのくらい?
-
矯正治療の進み具合によって多少異なることもありますが、矯正装置で歯を動かしている時は1~2ヶ月に1回程度。乳歯から永久歯への生え変わり観察時期は3~6ヶ月に1回程度通院して頂ければ十分です。
- 虫歯にならないの?
-
矯正装置をつけると、つけていない時に比べて歯が磨きにくくなります。ですがこれはしっかり歯を磨けば問題ありません。また、新しく装置をつける際にはしっかりとブラッシング指導も行い、来院いただいたときにはクリーニングも行います。
矯正治療では定期的な通院が必要になるため、その時に歯の状態をチェックすることも出来ますし、虫歯予防に繋がります。
- 床矯正ってどんな治療?
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床矯正とは、一期治療で使う装置の項目でもご紹介したような自分で取り外すことが可能な装置を使った矯正治療のことです。多くの床矯正装置にはネジがついており、これで歯列を横に広げて前歯が並ぶためのスペースを確保します。補助弾線という、スプリングのような細い針金で一部の歯を押して歯並びを整えていくという効果もあります。
食事や歯磨きの時など外すことも出来るため取り扱いが楽だという特徴がありますが、使用時間が不足してしまうと効果が低くなります。
当院のような矯正専門開業医も床矯正装置を使っていますが、目的に応じ、お子さんに一番合った装置を使用しますので、床矯正は使用している一部の装置にすぎません。
矯正歯科専門ではない一般歯科の先生が矯正治療をする際、床矯正装置を主に使用して治療していく矯正治療のことを、床矯正と呼んでいることが多いようです。床矯正は永久歯を抜くことなく歯並びを治療していくことを前提としており、歯が極端に大きかったり、歯を抜かないときれいに並べられないほどのデコボコがある場合などには適応でないこともあります。
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